ネット悲観主義 VS 楽観主義。「ウェブ人間論」

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ウェブ進化論で一世を風靡した梅田望夫氏と、芥川賞作家の平野啓一郎氏の対談本。

8時間×2回の、合計16時間におよぶマラソン対談ということで、あるテーマについて、それだけの時間ずっと話続けていられる2人の知識と教養と体力がすごい…!

おまけにこの対談、なんとなく険悪にも感じるようなシーンが多々ある。ネットのネガティブな側面を見てどちらかというと悲観的な平野氏に対して、ポジティブで楽観主義的な梅田氏。基本的には、平野氏が「ネットのこういうところがよくないのでは?」と質問し、それに梅田氏が「まあ大丈夫ですよ」と答え、さらに平野氏が「いやでも…」と食い下がる、そんな問答が様々な切り口で繰り返される印象。

ネットのある事象を2つの異なる視点で見たとき、それぞれがどういう考え方になるのか、その違いが面白くはあったが、対談によって何かシナジーが生み出され、読者を思いも寄らない視座へ導くというような事がなかったのは、少し残念。

この本、出版されたのが2006年で今から14年前。出てくるキーワードが、ミクシィはてな(このブログを運営している会社!)で隔世の感があったなあ。って書くとはてなに失礼か。

価値観が凝り固まった大人こそ見るべし。「びりっかすの神さま」

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Amazonの絶賛レビューを見て購入した児童書。娘に「パパも読んで!」と言われ、しぶしぶ読み始めたところ、これがなかなか面白い!

小学校に転校してきた男の子が、翼の生えたサラリーマン風の生き物を目撃してコミュニケーションし始める冒頭からぐいぐい引き込まれ、あっという間に読了。

成績順に席を決めるイヤ~な感じの担任先生が追い込まれていく展開に「自業自得やね」と、なかば溜飲の下がる思いで読んだが、娘の感想は「先生がかわいそう」。なるほど、そういう見方もあるのか。

多様な価値観を登場人物たちに語らせることで、読み手である小学生にもしっかり自分の頭で「何がよくて何がよくないことなのか」を考えさせる構成がすごい。わかりやすい勧善懲悪や説教くさい教訓の押しつけになっていない。だからこそ、娘の感想のように、読み手によってそれぞれ違った見方ができるんだろうな。

先生をあっさり自業自得と断じた自分の頭が、すでにステレオタイプな価値観に凝り固まっているのかも知れない。。

計画と無計画のあいだ 「自由が丘のほがらかな出版社」の話

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ミシマ社の社長三島邦弘氏が、起業してからの奮闘を綴ったエッセイ。

面白かった!この本を読むまで、ミシマ社という小さな出版社を知らなかったけど、俄然、興味が湧いてきた。 

立ち上げたばかりのミシマ社は、事業計画もなければ、お金もない。社長はエクセルも使えないといった感じで、まさに「無計画」。だけど、ひたすらに考え、そして行動する。そのパワーだけはどこよりも飛び抜けていて、その熱量に、関わった人たちは巻き込まれ、突き動かされていく。 

出版界構造的な問題や、分断主義、効率主義によって読者がおいてきぼりになってしまうことも多い現状を憂い、ただひたすら面白いものを追求して一冊入魂する。その姿勢は、見ていてい清々しくもあり、なにか熱いものすらこみ上げてくる。

そして、読み終わったあと胸に手をあてて考えてしまう。「自分は、考えられているか?行動できているか?」と。 

 

そうだった、人生って一度きりなんだ。「エッセンシャル思考」

エッセンシャル思考

 

エッセンシャル思考とは「より少なく、しかしより良く」を追求すること。

もう少し噛み砕いて言うと「人生、あるいは今この瞬間において、本当に大事なことを見極め(より少なく)、そこに集中して確実に成果を上げる(より良く)ための考え方や技術」ということ。 

うんうんうんうん、と100回ぐらい頷く。同感しかない。でも日々の生活でそれを実践することの難しさも痛切に感じる。本書では、その難しいことを実践できるように、3つの技術を紹介している。

①見極める技術(孤独、洞察、遊び、睡眠、選抜)
②捨てる技術(目標、拒否、キャンセル、編集、線引き)
③しくみ化の技術(バッファ、削減、前進、習慣、集中) 

いわゆるビジネス書だけど、エッセンシャル思考の成功例として紹介される事例が読み物としてたいへん面白く、あっという間に読み終えてしまった。たしかに、こんな風に実践できたら、毎日が充実しそうという納得感もあった。まずは今できることの第一歩として、早寝早起きを心がけるようにしよう(そこから!) 

本書の中で紹介される、アメリカの詩人メアリー・オリバーの言葉が突き刺さる。

「教えてください。あなたは何をするのですか。その激しくかけがえのない一度きりの人生で」